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2006.09/30(Sat)

そのすきまにあるなにか・2・ 

 日曜日――
 あいつとの待ち合わせの約束。
 起きぬけの朝。陽の光はまだ夏の余韻を残しているけれど、空気はすっかり秋の気配。

 今日はどこへ行くかなあ? いちお、秋冬ものの服とかみてみたいんだけど~? でもあいつ、はずかしがるだろうな、もしかしたら嫌がるかもしれない――。

 そだ、先週オープンした新しいカフェはどうかな~。
 ポットにコーヒーをつめてもらって、サンドイッチをテイクアウトして川原でピクニックとか。

 もちろんあまりのんびりしている時間はなく、あわてて熱いシャワーを浴びる。
 休日の朝はいつも、熱めのシャワー。寝ぼけた頭もすっきりして、だんだんとお出かけのための顔になってくる。平日よりもメイクは控えめに、でもチークだけは濃いめに入れてみる。週末の、このところの定番は「ANNA SUI」のEDT。

 ――はやくでなくてゎ~

 早くあいつの顔を見たい、声を聞きたい――それでもあまり急いできた風に見られるのがいやで、カヨコはいつも約束の時間よりかなり早めに出ることになる。そして駅への道をのんびりと歩く。

 駅までの、きっちり15分。
 自分の気持ちを落ち着かせるように。
 自分の気持ちをじらすように。
 彼への気持ちが十分に満たされるように。



 「あれ、カヨコ?」

 (?)

 ふいに声をかけられ、我に返る。
 えっ、えっ、えっ。なんで~?

 「あ、俺サ。先週こっちに帰ってきたんだ。
  ――長かったよな、2年間は。」

 とまどうカヨコを気にもせず。
 あのときのように。
 あの2年前のように。
 つい昨日も会ってたみたいに。

 なんで、なんでなの~?
 とつぜんあたしの目の前から姿を消したくせに。
 そんな風に気軽に話しかけないでよ?
 あたしのこの、2年間は何だと思ってんのよ~?

 散らかしたままの部屋を突然のぞかれたみたいで、まるで気持ちの整理がつかない。
 突然の再会に、ただ心臓がどきどきどきどき意味もなく高鳴る。

 あちらで過ごした2年間の出来事、今度帰ってこられた事情とか、熱っぽく話しているみたいなのだけれど、まったく頭の中に入ってこない。ただただ、晴れ晴れしくまるでひとりで演説してるみたいに話している。

 「じゃ。
  実は今日はあまり時間ないんだ。今度また電話するよ。
  詳しい話はそのときにでも。」

 颯爽と歩き去る姿はあのときのまま。少し癖のある足の運び方。一様でないリズム。

 結局。
 カヨコからは何も話すことなく。
 彼は立ち去ってしまっていた。

 ばかねぇ。
 おっちょこちょいなところ、あのときのまま。
 でも。
 あたしは。
 ケータイ変えたし。
 部屋も引っ越したし。

 ――ただ変わらないのは、この駅を使っていることぐらいだけなのに。

 そのさわやかな風はふと、キンモクセイの淡い香りを運んでくる。
 淡い香りはまた、少し遠い日の想いを甘く包みこみ、やさしく心の奥底に押し込んでゆく。



 そだ。
 あいつ、どんな顔して待ってるんだろう。
 いつものあの、すこし不安そうな顔をしてるのだろうか。

 「おまたせ~っ」

 そして、
 あたしを見つけて穏やかに広がるやさしい、はにかんだような笑顔。

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2006.09/27(Wed)

そのすきまにあるなにか 


「おい待てよっ」
 声は聞こえたけど、振り返らない。ここで振り返ったら負けだもの。だって、だって、だってそんな酷いことってある? いったいあたしのことなんだと思ってんのよ?
 テーブルに出してあったケータイを乱暴につかみ、カヨコは構わず店をでる。コーヒーショップの女性店員の「ありがとうございました~」いつも聞き慣れてるはずなのに、今日はなぜかやけに明るく感じる。

 ――夕方近くのショッピングモール。少し歩けば駅の改札に直結している。だんだん人通りも多くなってきた。カヨコはなんとなくそのまま家に帰る気もしなくて、普段は使わない出口から外に出てみる。夏を過ぎたころの空気は、すこしすずしくすこしく寒く感じて。

 なんであんなこと言うんだろ、あいつ。もすこしあたしの気持ちも考えてほしいょなぁ。いったいナニサマのつもり~? すこし頭、冷やしたらいいんだゎっ。

 あてもなくなんとなく。歩くあるく歩くあるく。

 気がつけば急に空が暗くなり。雨が、ぽつりぽつりぽつり。あっというまに地面がまだら模様に―そして一面の水びたしに。すっかりそれでもしっかりしっとり降り出した雨。
 なんでよりによってこんな時に雨が降ってくるのよ?だいたい傘持ってきてないじゃなぃ。このままじゃ、雨でぐしょぐしょになっちゃうよ~?
 しかたない駅に戻るか―
 ぬれねずみになってもかなわない、と思って踵を返す。雨はしだいに強くなり、前を見てるのもつらくて足元だけ見ながら、せめて転ばないように慎重に、それでもいそいで駅の改札をめざす。

 そろそろ駅だ~ひと安心、というところまできて、
 「!!」
 とびこんでくるみなれたあいつの姿。
 えっ、えっ、えっ、なんでっ?
 いつものあのでっかい傘をさして。
 いつものあのはにかんだような笑顔で。

 なんでそんなニヤニヤしてんのよっ?
 こっちは雨に降られてもうぐしょぐしょになっちゃったじゃないっ?
 なんですぐに追いかけてこないのよ~?
kiyoniki01
 とりあえず。

 とびこむ。
 あなたの傘の中。あなたの胸の中。

 もーあんたなんか、だいッきらい!

 なぜか目の前かがすんでくる。なによこれ?
この雨でぐしょぐしょになってるから?
 そのうち、ほおを温かくつたうひとすじの涙。

 でもこのまま。
 もうすこしこのまま。

 ――もうすこしこの、ぬくもりの中にいさせてよ? いいでしょ、もすこしくらい。


<Illustration by kurikiさん>

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